光明の生活を伝えつなごう

関東支部だより

関東支部 平成26年3月

(1)ご法話とお念仏の会

志村 稔

◇日 時:1月19日(日)
◇会 場:光明園
◇講 師:河波定昌上首
◇参加者:13名

正月最初の光明園の例会は、約三十名の参加者のうち数名の新しい方々も集い、称名の声高らかにすばらしいお念仏会でした。当日の河波定昌上首のご法話は次のとおりです。

1 日本の建国から近代までの転換期における三人の出現

新年最初のお念仏の例会です。今年一年精進していただくことを心から念願いたします。

正月を迎えて感じることは日本に生まれたことの幸いです。お念仏が出来る国に生まれたということは有り難いことです。日本が建国して国家として発足するときに聖徳太子が出現され、私達に大きな影響を与えました。「十七条の憲法」は国の始まりに国の方針を示したというものです。はじめの「和を以って貴しとなす。」は国のみならず全ての組織に通ずる大切なことです。次いで、「篤く三宝を敬へ。」と行動の基準を示し、そして皆全て凡夫であることを自覚しなさいと説いています。このように聖徳太子による国が始まりました。また、十三世紀には法然上人が現れます。古代と中世の転換点の時でした。中世の新しい理念が必要な時に法然上人がお生まれになり、私達を導いて下さいました。お念仏により全ての人が救われていくという、すばらしい御教えです。『選択本願念仏集』はまさに宗教改革であり、キリスト教においてルターが宗教改革を行うのは十六世紀です。それより数百年も前に法然上人により宗教改革がなされていました。そして、日本は二十世紀を迎えるに当たり封建時代から近代を迎え、西洋近代の科学や哲学、宗教学、キリスト教などが入ってきました。この転換点の時代に弁栄聖者が現れました。弁栄聖者はこれら最新の近代の知見を取り入れ、新しい光明主義の思想を展開します。

2 太陽光の三つの光の譬え

弁栄聖者は科学を全面的に取り入れてお念仏の教えとしてお説きくださいました。如来様の光明は太陽の光に譬えています。太陽光は可視光線、赤外線、紫外線の三つの光線で構成されています。温かさを感じる赤外線、紫外線は目に見えませんが私達の生理活動に変化を与える光線です。如来様の光明も譬えて言えば三つの光が働いて、お念仏をしていると何か明るさを感じていく、何か温かさを感じていく、何か変化を与えていく。この目に見えない「化」(ケ)という変化の力を弁栄聖者は強調されました。礼拝儀に「この光に遭うものは三垢消滅し」とありますが、三垢は煩悩です。三毒とも言われる「貪欲」、「瞋恚」、「愚痴」の仏教では最も大きな煩悩のことですが、人はこれに立ち向かっても勝ち目はありません。そういう時にどうすればいいかというと、お念仏をすることにより如来様の光明が紫外線のように変化を与えていくと、如来様の救いについて説明されています。

3 宇宙に満ち溢れる三つのエネルギー

また、弁栄聖者は宇宙には三つの力が満ち溢れていて私達に影響を及ぼしていると説いています。弁栄聖者はこの三つの力(三力)を当時の最新の科学用語を用いてエネルギーという言葉を使っています。この力(エネルギー)は物的エネルギー、心的エネルギー、神的エネルギーの三つの力が宇宙に満ち溢れて働いているというのです。大切なのは神的エネルギーです。これは仏教の専門用語で神力を神的エネルギーと言っています。無量寿経の中に「神力演大光 普照無際土 消除三垢冥 広済衆厄難」(『無量寿経』四誓偈)とありますが、この神力が神的エネルギーのことで、経文の意味は、「神的エネルギーが宇宙全体に遍満し、お念仏により宇宙の不思議な神的エネルギーの力が働いて、紫外線の力のように私達の心に化学変化が起こり、いつの間にか煩悩が消えていきます。貪欲の心が薄らいでいく、怒りの心が融けていく、愚痴の心が光に照らされて明るくなってくる。そして広く諸々の厄難から救済されていくのです。」ということです。

また、心的エネルギーには、人の不思議な能力として仏教では六神通という六つの神通力を言っています。善導大師が作られた『六時礼讃』の「日没礼讃」の最後に「発願文」がありますが、この中に六神通が出てきます。発願文では「命終の時に臨んでこころ顛倒せず、こころ錯乱せず、こころ失念せず」とあり、念仏により死に直面する恐怖や絶望から開放され、更に「身心にもろもろの苦痛なく、身心快楽にして」とあるのは快楽ホルモン等の様々な脳内ホルモンの働きが解明されてきておりますが、念仏によりこれら脳内ホルモンが活性化して働いているのだと思います。また、「六神通をえて」とありますが、弁栄聖者も神通力をお持ちで他心通や神足通、宿命通などの様々な神通力のエピソードが残されています。ピタゴラスもひらけていて十世前のことが見えていたと記録に残っており、仏教だけのことではなく精神の深みの中にそうした力が働いているのです。神通力とは現代では超能力と言われるものですが、先日、NHKの番組(ザ・プレミアム超常現象)で様々な超能力をアメリカなどは国家として科学的に研究し、軍事などにも活用されていたことが紹介されていました。物的エネルギーについても、現在人類が知っている物質は宇宙のわずか4.9%の物質だけで、暗黒と名づけられた謎の暗黒物質(ダークマター)が26.8%あり、暗黒エネルギーは68.3%にものぼるという驚くべきことがわかってきました。このことは、東京大学の村山斉先生が詳しく説かれています。弁栄聖者は物的エネルギーのその奥に神的エネルギーが働いているというお念仏の有り難さをお説きくださいましたことが、また有り難いことです。

4 お念仏はこころの革命

エネルギーは目に見えないものですが、それが現象してくるから存在がわかるのです。このことを現象学と言いますが、電気は目に見えなくても電灯により光となって現象するように、お念仏も現象してきます。法然上人の「月かげの歌」の「月かげの いたらぬさとは なけれども ながむる人の 心にぞすむ」の中には平仮名の「すむ」と書かれていますが、これには「住む」「澄む」「済む」という三つの意味が込められ、田中木叉上人はこの「すむ」を「はたらく」として頂きなさいとお教え頂きました。「ながむる人の心にぞはたらく」は、お念仏により私たちに如来様が働きくださるということです。月かげの歌は仏教全体で頂けば「加持」のことです。加持を冥加ともいいますが、お念仏の中で阿弥陀さまの不思議な力である加持が働くのです。弘法大師も「即身成仏義」で「仏日の影、衆生の心水に現ずるを加といい、衆生の心水、よく仏日を感ずるを持と名づく。」とあります。月かげの歌と同じ意味ですが、月を太陽に譬えて加持を説いています。お念仏は心の革命です。お念仏により私たちの心が変革していくのです。ひと声ひと声のお念仏の中に、極楽往生だけではなく、私たちの心に変革が起こることを説いたのが弁栄聖者です。善導大師の『往生礼讃』に「光明名号摂化十方」と、阿弥陀さまによりあらゆる衆生を育て導き心に変革が起こってくると説いていますが、これは感応道交のことです。これを詳しく説かれたのが天台大師で「冥機冥応、冥機顕応、顕機冥応、顕機顕応」と説き、冥は如来様の見えない力のこと、顕は見え現れることで、気がつかないうちに働きあって如来と衆生が感応道交するということです。ミネソタ大学の研究でひばりの鳴き声は麦の生育を促進する働きがあることが発見されましたが、このような働きが感応道交です。如来様の光明に包まれて私たちはお念仏の心が起こるとき、気がつかないうちに冥機冥応が起こってきて、最後に顕機顕応となり如来様の本願の力を頂けるようになります。

宇宙は何億年もかけて人間を育んできました。宇宙がはじまるときから阿弥陀様の力は働いており、宇宙の働きは阿弥陀様の営みです。最近の自然科学でも不思議な宇宙の力により生命や人間が生れたことがわかってきました。弁栄聖者は「人生の帰趣」の中ではっきりとこのことを述べています。私たちは如来様の不思議な因縁の中で生かされており、私たち一人一人の命を生かしていくことが光明主義の使命でもあります。

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