光明の生活を伝えつなごう

関東支部だより

関東支部 令和4年11月

第43回大巌寺別時念仏会

佐藤蓮洋

日 時:9月17日(土)および18日(日)
会 場:檀林龍澤山大巌寺
法 話:大南龍昇上人(浄土宗勧学)
参加者:17日47人、18日40名

 令和に入ってからの初めての別時となりました。令和元年9月の台風15号により、大巌寺様も甚大な被害を受け、その修理とその後のコロナ禍により別時は3年のお休みを余儀なくされました。三門、大広間、天井、廊下等の修復とともに、書院(平成23年に「国登録文化財」に登録)は単なる改修ではなく、江戸時代の絵図に見られる瓦葺大屋根・唐破風玄関に復元改修されました。教学の場としての檀林の雰囲気が復活しました。
 今年も一般の方、檀信徒、大巌寺幼稚園および慈光保育園の先生方の参加があり、換気を良くするため、会場を広くし、黒幕が一部なくなったため開放的な環境でのお念仏会になりました。
 開会式では、長谷川住職からは、「外部環境が大きく変化し、振り回されるような状況の時こそ、内面の修養が大切な時期としていただき、お念仏に励んでください。」とのお話があり、閉会式では、「職員の先生方の研修でもありますが、研修と修養の二つが織りなす環境が大切です。心の修養の場として、二日間の別時が役立つたと思います。今年は、大南上人をお導師に迎え、やさしいお話を交え、充実した2日間でした。来年も開催していきたい。」と結ばれました。最後に、「法の糸」が合唱され、お導師の大南上人は退室されました。
 二日目の午後には台風の影響のため、激しい雨、雷(落雷)という自然の営みと共にお念仏の声が鳴り渡り、外と内が交響するような不思議な空間になりました。
 大南上人から、午前・午後に各1回の計4回の御法話をいただきました。誌面の都合上、
部分的になりましたが、お話と配布されたレジメをもとに、まとめさせていただきました。

〈大南上人の御法話から〉

1宗教詩の風光・・・「まど・みちお」と「金子みすゞ」の世界
 まど・みちお(1909~2014)も金子みすゞ(1903~1930)も、有名な詩人であり、主に童謡詩を書かれています。しかしその内容は、宗教詩と言ってもよく、宗教とは何かが示されていると思います。
 ここに紹介したまど・みちおの8つの詩は、「本質を突き、おおらかに」と言えるかもしれません。金子みすゞの13の詩は「温かなまなざし 優しさ」と言えるもしれません。「すべては与えられている。与えられ、生かされているから、それに恩返ししよう」「一つ一つが関わりあい存在している」「みんな他によって生かされている」「無明の中で、私達には見えていないだけで、本当のものは実在する」というメッセージに溢れています。仏教の縁起や神仏の存在が身近な題材ややさしい表現をとおして理解することができますね。宇宙の存在の中で、根源的なものに対する郷愁や感動を深く感じることができます。さて、あなたはどっち派でしょうか?
2弁栄上人の風格
 山﨑辨誡上人の書かれた『辨榮上人の片影』を参考にお話しします。田中木叉上人が書かれた「弁栄聖者略伝」は、『日本の光』のエッセンスでもありますが、辨誡上人が弁栄聖者の身近におられ見聞されたエピソードが紹介されています。
 たとえば、筑波山中のご修道された時の動機、目的、衣食についてご質問された折、聖者は「華厳五教章の講義を聞て教相文字上の事はわかりても、仏教の真理は三昧に入て神を凝らすにあらざるよりは証入することは能はず。依て暫らく山に入れり」「入山修道の要は、形より精神上の要意が肝要に候」と述べられています。
 また、東漸寺の師僧であられた静譽上人ご遷化のとき、弁栄聖者は恩返しのため本堂で独座し、一百日別時念仏を厳修されていた時に、福田行誡上人が聖者に送った書簡に「・・・予(行誡上人)は松戸の里に適来し今日而(=弁栄上人)を窃に憶う。長老を以って、第一謁見の人とす。・・・」と書かれていました。福田行誡上人は、弁栄聖者のことを、「仏様にお会いしている僧である」と認め、その徳を賞賛されているわけです。
 また、日常衣食にもこと欠きながらも、白米は来客に供養し、ご自分はお米のとぎ汁を飲み、時には絶食していたということも書かれています。本当に、「我」というものがない上人なのです。
 聖者の具体的な姿は、まさしくお釈迦様であり、それは聖者の霊性の品格を現すエピソードに顕れています。
3 光明主義の教え
(1)光明主義に就いて―所求・所帰・去行―
 前掲の『辨榮上人の片影』からのお話です。お釈迦様は、相手の心情を計り、その人にあった法を説く対機説法をされました。ここのお話は、弁栄聖者が中川上人の悩みにお応えした説法であり、同じような悩みを持っていた人の代表として中川上人のご質問にお応えしたものともいえます。所求・所帰・去行は光明主義の重要な教えでありますが、法然上人の教えの再解釈にもなっています。
 所求とは、ミオヤの光を獲得して光明の生活に入ること。命終わる時は、浄土に生まれることです。
 所帰とは、帰命する本尊は阿弥陀仏であり、如来は見と不見とに係わらず真正面に在すことを信じることです。
 去行とは、ミオヤの聖意にかない光明の中に摂められる方法は、ただ本願の名号を称え即ち念仏三昧を体験することです。
 弁栄聖者は、智のはたらきを遮る無明の世界があるから、私たちは盲目的生活にならざるをえない、と述べています。従来の仏教では、光がないことを「無明」というけれど、その「無明」は何にもとづくのかという疑問には、答えがなかった。しかし、弁栄聖者は「無明がはたらき、私達は生命を得た」「無明は命を支えているもの」「無明があるから、私達はある」と説かれました。無明の暗い世界が、阿弥陀仏の光に包まれる。つまり、光明の摂化を被って光明の中の人となりえるのです。無明と光は切っても切れない関係があるのです。
(2)ミオヤの実在
 弁栄聖者は、「仏教は哲学であるとともに宗教である」と述べられ、哲学的な表現である真如・法性を、宗教的に「宇宙全一にして活ける尊きミオヤであるので、法身・如来である」と言われました。これは、聖者が人間を超えた普遍的存在を理解するのが宗教であると捉えられたことで、「釈迦の教えに帰れ!」という表明にもなり、そして大乗仏教的な考えを明らかにしたことになりました。従来とは異なる、新しい仏身観でしたが、この仏身観について、田中木叉上人がたいへんわかりやすく、三身即一のミオヤとして説明をされているのでご紹介します。
法身:生みの親。根底から一人一人を活かしてくださる宇宙の本体。
報身:育ての親。如来の名を呼び、ただおすがりすることで、お育てくださる。
応身:教えの親。
 私なりにまとめると、「あてにし切って、すべてをお任せしてお念仏をしていると、人のもっている霊性(仏性)をむくむくと呼び起こしてくれる。そして、欲望にまみれた我ではなく、自己を育ててくれる。」ということです。
4弁栄上人の人生観・念仏観
 『辨榮上人の片影』からのお話です。
 聖者は「貯蓄心の必要」を説かれ、「節倹は単に資材を作るのみに在らず、人生の性格を向上せしむ」と述べています。私心なく、与えられたものを生かす。卑しさにとらわれない、ということですね。
 また、聖者が本尊前にてお念仏をされている時に、あたかも眠っているような様子であったり、退堂の時に、尊像について古仏とおっしゃったり、作者を問われたのを、ある人から不遜の極みであると詰問されたときに、上人は笑って本尊の後ろに在す、生きた仏様を拝んでいます、と答えられたとのことです。
 また、「人生の最大の目的は吾が霊性を発揮するにあり。知識と道徳と能力との発展なり。・・・人生に真意義をあたうるものは精力主義奮闘精励実行なり。自殺は人生の強盗なり」と述べられています。このように生きられたら素晴らしいな~、と思いますね。
最後に、「念仏は死ぬるためではなく、生くるためにて候。生くるとは生(うま)るること。生まれるとは人々本具の霊性が無量寿如来の霊光に触れて発生することに候。」と説かれています。
 光明に出遭って自分が新しくなる。過去にとらわれずに生まれ変わる。それは、仕事に打ち込んでいる今の私が仏なんだ!という、「いま、ここ」を大切にすることであると思います。
以上

光明園 9月の報告

佐藤蓮洋

◎4日は一行三昧会。10名参加いただき、午前中は、晨朝の礼拝、お念仏、聖歌「心田田植歌」を、午後は聖歌「光顔巍々讃」、昏暮の礼拝、お念仏をお称えしました。
◎25日はお念仏会と講話の会。9名参加いただき、午前中は、晨朝の礼拝、聖歌「心田田植歌」、お念仏を、午後は聖歌「感謝の歌」、昏暮の礼拝をお称えしました。
 その後、茶話会を行うコーナーで円形になり、四回目の勉強会を行いました。木叉上人の「年頭法語」について、花輪さんから「年頭法語メモ」を以前に配布いただきましたが、今回は『無量寿経』『観無量寿経』の一部のコピーが配布され、弁栄聖者の御教えとの関係が解説されました。
 弁栄聖者の教えの重要ポイントとして、『観無量寿経』(第九観(真身観))の中の「仏身を観るをもってのゆえに、また仏身を見る。仏身とは、大慈悲これなり。無縁の慈しみをもって、もろもろの衆生を摂するなり。」が紹介されました。また、法然上人の道詠こそが、弁栄聖者により「髄」とされたこと、また『無量寿経』の光明と弁栄聖者の十二光の関係などが説明されました。多い情報量を整理するのは、私の能力を超えてしまいますが、弁栄聖者の御教えを、法然上人そして経典からも重層的・文献的に説かれ、大変興味深く感じました。
 月1回、1時間ですが、弁栄聖者の御教えをさらに深めてゆきたいと思います。
  

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