ヒロくんとお父さんは食べものに困りスイカ畑へいきました。
そして、畑の通路のこかげにヒロくんをかくれさせ、
「いいか、だれか人がこないか、ここでちゃんと見張っているんだぞ」
そういうと、お父さんは畑の奥に入っていきました。
しばらくするとお父さんが「おーい、だれかきてないか?」
ときくと、ヒロくんが「お父さんだいじょうぶだよ、だれもきてないよ」
そうヒロくんがこたえるので、安心してスイカを盗ろうとしました。
そのとき、ヒロくんが上を見ながら、
「お父さん、だれも見ていないけど・・・」
お父さん「だれも見てないけどなんだ?」
ヒロくん「お月さんがじーっとこっちを見てるよ」
そうヒロくんが言うと、お父さんは手をとめて、
お月様の方に顔を向けました。
するとお父さんはしばらく月をみつめています。
そして目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちてきました。
おとうさんはたまらずうつむいて涙をふきながら、
「自分はなんて愚かなことをしようとしているんだ。
こんなことをしてちゃだめだ。しっかり仕事をさがさなければ。」
そんな事を心に思いまいた。
お父さんは息子になさけない姿を見せたことをはずかしく思いました。
また、食事を息子に食べさせてあげられないことを情けなく思いました。
そしてお月さまに見まもられながらヒロくんと帰っていきました。
帰る途中、お父さんの表情が悲しくてくらい顔がだんだんと
「がんばるぞ」と言っているような明るい顔つきに変わっていきました。
そのお父さんは翌日、必死になって仕事を見つけ、食べ物を買い、ヒロくんにお腹いっぱいの食事をあたえました。
おしまい
※物語のせつめい※
この話には仏さまが実は二回登場します。ちょっとわかりにくいですね。まずお月さまが仏さまです。いつも外側から見まもっている仏さま、このお月さまをみて、お父さんはスイカをぬすめなくなってしまいました。それは毎朝お称えしている『礼拝儀』の「至心しに帰命す」の内容です。むずかしい言葉だけれども、そこには「仏さま私の真正面にいて見まもり、お育て下さい」と説かれてあります。そのお月様が一回目の仏さま。
二回目の仏さまはお父さんの心の中にいました。お父さんは月をみて涙を流しながら、「こんなことをしてちゃだめだ。しっかり仕事をさがそう」そう思いました。それも心の中にいる仏さまの声です。それは『礼拝儀』の「至心に勧請す」の内容「いつも私の心の中にいて、正しき道を教えてください」の内容でした。仏さまは、お月さまのように自分の心の外にもいて、そして自分の心の中にもいます。どちらにもいてみんなを、外と内から見守り、育てて下さいますよ。