光明の生活を伝えつなごう

中部支部だより

中部支部 平成30年12月

第97回 唐沢山別時念仏会報告

植西 武子

◇日 時:8月21日(火)~27日(月)
◇会 場:唐沢山阿弥陀寺(長野県諏訪市)
◇維 那:古田幸隆上人(導師:兼務)
◇参加者:34名

 お別時の前日、20日の11時過ぎに懐かしい上諏訪駅に着きました。山々に取り囲まれた信州は幾分、涼しかろうと期待を込めて駅に降り立ちましたが、新宿駅と大差ない熱気が迎えてくれました。文化的に都市と地方の格差が無くなりつつある昨今ですが、気象の面でもその傾向があるのかと今年は特に感じました。
 本年も村松年秋、粽ご夫妻の車に便乗させて頂いて、お山を目指しました。途中の駐車場を過ぎると、山道が一段と厳しさを増し、車が激しく左右に揺れ出すと、いよいよ唐沢山に来たんだとの実感が湧いてきます。毎年味わうお別時への期待と不安が交錯する瞬間です。本堂前で車を降りて、まず、本堂の阿弥陀様にご挨拶しました。「今年も無事で、充実したお別時となりますように。」と祈りました。古田上人と玉木さんは既に到着しておられました。今年からは管理人さんが不在と言うことで、一週間のお別時に多少の不安がありましたが、正願寺様がご家族で前日にお掃除して下さったそうで、とても助かりました。本堂や各部屋の清掃、布団干し、買い物と慌ただしく時は流れました。

〈道場設営〉

 毎年のことながら、会場設営は大変です。暗幕を巡らし、正面にご絵像を設置するには高所に登り、かなりの危険を伴います。今年も古田上人を中心に、お手伝い下さっている世話人様の数名で設営して下さいました。出来るだけ精神統一しやすい環境の設定に、光、通風、音響と諸般に亘り配慮して下さいました。合掌するばかりです。その後、全員で本堂の畳拭きや宿舎となる各室や廊下の清掃と慌ただしく時間は過ぎて行きました。参加下さる皆さんを気持ちよくお迎えしたいと言う思いがよく伝わってきました。感謝の心、極み無しです。

〈参加者の状況〉

 参加人数は34名(男18名・女16名)でした。年齢層は10代が1名、30代が2名、40代が1名、50代が8名、60代が11名、70代が6名、80代が5名でした。お忙しい中をやりくりしてご参加下さった皆様に心より感謝致します。若年層への参加呼びかけが今後の課題だと思います。参加者については人数より内容的に充実した別時であれば良いと言う意見もありますが、主催する立場からすれば、やはり出来るだけ多くの人にお念仏の時間をもって欲しいと願うものです。今を遡る半世紀前、即ち、田中木叉上人最後の唐沢山別時では参加希望者が百名近く、大変な盛況でした。今も印象に残る場面として、その時、申し込み無しで参加された方があり、受付では収容力の限界という事で、その方は下山を余儀なくされました。当時、初めての参加で、その場面を見ていた私は「遠方から来られたのに気の毒だな。一人くらい何とかならないものかな。」と思ったことでした。今、主催する側の立場になって、きっとつらい決断だったのだと理解しています。光明主義全盛の活気溢れる古き良き時代のことで、申し込み者が収容能力を上回ると言うことは、ある意味で贅沢な悩みだったとも思われます。そのような時が再び来るために、みなさんと共に努力を重ねていきたいと思います。来年は百回忌、弁栄聖者が一番喜ばれることはいろんなセレモニーもさることながら、そう言うことだと思う次第です。若者の宗教ばなれが懸念されている昨今、一人一人が小さなことからでもアクションを起こさねばと思います。

〈別時中の主な行事〉

 開会式21日(火)19時~
 今年は全日程参加の方が少なく、ウイークデイであった初日は19名と言う過去最小人数の開会式となりました。少し淋しくは感じましたが、ある意味ではコンパクトにまとまり、落ち着いた、家族的な雰囲気を醸し出していました。
 古田上人の司会により会は進行されました。世話人より挨拶と別時中の生活心得についての話がありました。その後、大南上人様より別時の心得についてお話し頂きました。特に「三心四種」について語られ、中でも「深心」を別時の根本に置くと、時間をかけて詳しく丁寧にお話し下さいました。本年も予算の関係で導師なしのお別時としましたが、実際には導師としてお話し頂いた形となり、恐縮の限りでした。
 その後のお念仏は例年に比べて少人数ながら、称名と木魚の音はいつもと変わらぬボリュームで、皆様の意気込みが感じられました。

 聖者墓参25日(土)9時~
 今年も天候に恵まれ、予定通りに実施することができました。朝の清掃を手早く終えて、全員「礼拝儀」を持って玄関前に集合しました。「きよきみくに」を歌いながら、ゆっくりとお山を目指しました。最後尾からみなさんの後ろ姿を拝みつつ、登っていきますと、50年前と殆ど変わらない情景に時が止まっているような錯覚に陥りました。聖者の墓前も然り、苔むす墓石、静寂な雰囲気、そよ吹く風の音、柔らかな木漏れ日、遠くで鳴く蝉の声、全てが半世紀前のまま停止している不思議な空間に包まれて、読経、お焼香、お念仏と進行しました。同時に私はどれだけ進歩したのか、否、退歩したのか、聖者の墓前に立って反省しきりの心境でした。今年は大南龍昇上人、古田幸隆上人、金田昭教上人、佐野成昭上人と法衣姿のお上人が四人もおられたことも印象的でした。

〈聖歌斉唱〉

 今年も休憩時間を延長して聖歌をたくさん歌いました。宗教的情操を喚起するには何よりと思います。今年は佐野上人が音大生を誘って参加下さいました。さすが専門的に練習を積んでおられるだけに、しっかりと演奏下さり、助かりました。残念ながら彼女は所用があって途中までの参加でした。幸運にも後半から遠藤由起さんが参加され、うまくバトンタッチとなりました。聖歌を歌うことにより、心身共にリラックスし、宗教的情操も培われ、歌っている皆様の表情がとても明るく、歓喜に満ちているように思えました。

〈道場風景〉

 ハード面の設営は既に完了し、次はいよいよソフト面です。これは参加者全員が醸し出すハーモニーです。今年も皆さん非常に熱心に修業に取り組んで下さいました。お念仏中の道場の出入りも少なく、お念仏に専心されていました。特に初参加の方には高いハードルであったと思いましたが、実にしっかりと取り組んでおられました。ただ、後半になって、「無言の行」と言う唐沢山別時で延々と受け継がれてきた鉄則が、緩んだことは残念でした。「特に台所が一番よくしゃべる。」と金田上人より度々、注意されながら守れなかった点は反省の極みです。

〈閉会式〉

 全日程参加者が年々、減少している関係で、開会式と同様に閉会式も18名と少なくなったのは残念でした。時代の傾向とは言え、一週間の休暇を取るのは困難になって来ていると思います。人数は少ないでしたが、とても厳粛な雰囲気で式は始まりました。この日は毎年3時半の起床です。4時に入堂し、最後のお念仏を約1時間しました。最後の念仏、しかも早朝とのことで皆さん実に熱心に称名念仏に励まれました。総回向の後、いよいよ閉会のセレモニーが始まりました。世話人から別時についての感想と参加者への謝辞がありました。続いて大南上人様からおことばを頂きました。最後にみんなで「法の糸」を歌いました。

〈おわりに〉

 昨年より導師なしのお別時と言うことで、今年も維那役の古田上人様には大変なご負担をかけることになりました。前日から会場の設営、買い物や正願寺様との交渉等、実に多方面に亘ってお手伝い頂き、ありがとうございました。
 また、大南龍昇上人様は個人としてご参加下さいましたのにも拘わらず、ご法話をお願いし、大変ご無礼致しました。お上人様は参加の前日に草刈りをされていて、かぶれ、そのため両腕がひどい状態で一週間を過ごされました。治療に充分なお力添えも出来ず、大変申し訳なく思いました。心よりお詫び申し上げます。そのような中で、ご法話や別時中の諸行事に導師としてご活躍をお願いし、恐縮の限りでした。衷心御礼申し上げます。
 また、金田昭教上人様もかなり、お忙しい中を日程を調整して参加、ご指導下さいました。特に大木魚は精神的にも、肉体的にも負担の大きい役割です。睡魔に襲われ、ついつい途絶えがちなわれわれを鼓舞し、お導き下さいました。ありがとうございました。
 更に、ここ数年に亘り、お世話役として、村松年秋、粽ご夫妻、玉木忠男氏、下司仁美様には多大のお力添えを頂きました。特に本年はほぼ全てお任せした形で誠に申し訳なく思いました。まさに「仏様のお使い」と心中、合掌致しました。
 お忙しい中、時間を割いてご参加下さいました皆々様に感謝し、心より御礼申し上げます。お別時の余韻が続き、念仏相続の日々お過ごし下さいますこと心より祈念致しております。

  すきとおり尽十方はただ光
   是ぞ我かもこれ心かも 
             ―田中木叉上人―

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