近畿支部夏期別時参加記
安宅川 崇
近畿支部主催の夏期別時念仏会が、7月17日(日)から20日(水)までの四日間、岡山県久米郡の誕生寺で開催されました。
今年は法然上人八百年大遠忌の年に当たり、その年に、法然上人生誕の地でお別時が開催されることは、とりわけ意義深く、有難く感じました。
17日の午後、誕生寺に着いた妻と私は、境内の逆木の公孫樹(天然記念物、樹齢870年余)を、炎暑の日射しの中で、懐かしく見上げることが出来ました。誕生寺には、20年程前、和歌山から四国に行く途すがら、家族で立ち寄ったことがあり、境内の公孫樹の古木が、夕光に包まれるように立っていたことを、はっきりと覚えていたからです。
暫く境内を拝観した後、5時前、いよいよ道場に集合となりました。初日の参加者は、11名でした。
導師は、念仏の行を殊に大切にされる古田幸隆上人でした。関東の盆会行事を済まされ、直ぐに馳せつけて下さった古田上人は、維那も兼ねて下さいました。「お念仏は山登りのようなもの。一歩一歩、一声一声、みんなで励まし合いながら、大きな声でお念仏させて頂きましょう」と、初めのお言葉がありました。
今回は法話がなく、念仏三昧に徹するという形でした。2日目から参加者が2人増えて13名となり、一心に念仏が続けられていきました。
お念仏に入る前に、導師上人は、弁栄聖者の『お慈悲のたより』から、「すべてを大ミオヤに御任せ申し上げて常に大ミオヤを念じ、大ミオヤはいつも離れずあなたの真正面に在まして慈悲の面をむけて母の子を思うごとくにまします。あなたは其のみをおもうて専らにして専らなる時は……唯のこる処は御慈悲の如来様ばかりと成り候」のお言葉等を、繰り返しお示し下さいました。
念仏の合い間には、『聖きみくに』『念仏七覚支』『如来讃』『応身の讃』等が佐野成昭師の美しいヴァイオリン伴奏のもとに歌われました。いくつもの聖歌の中で、私自身、特に嬉しく思ったのは、田中木叉上人作詞の「なさけにもゆる親ごころ……」の『御じひの頌』と「金色におう しののめの けさの光の なつかしさ……」の『心田田植歌』を歌わせて頂いたことでした。昔馴染んだそれぞれの聖歌は、近年の念仏会で歌う機会を得ないままに、私から長らく遠ざかっていたからでした。それだけに、ひとしおの感動がこみあげてきました。そして、その時初めて、『御じひの頌』の『礼拝儀』と『光明歌集』との歌詞の相異に気付かせて頂きました。また、『心田田植歌』を歌っていると、大学の頃、東京練馬の光明園での木叉上人のご指導の思い出が甦ってきました。
最終日、いよいよ別時念仏会も大詰めとなり、『のりのいと』を歌う時は、いつものことながら、最高に満たされた気持ちになりました。
今回の、古田上人のご指導と進行におけるご配慮は、私達の念仏行に大きな力を与えて下さいました。別時会の全般に亘るお世話を頂いた佐野師、また、ご縁を頂いた光友の方々、そして、誕生寺様の宿泊食事等に対する格別のおもてなし等々、一つ一つを思う時、ただただ感謝の気持ちで一杯になりました。
別時後半になって少しく台風の到来を感じましたが、すべて如来様にお任せ申し上げ、心安らかにお念仏を続けさせて頂きました。そして、私のような未熟者が、眠気と正座に苦しみながらも、何とか左記のような日程を全うさせて頂くことが出来ました。
帰ろうとして、誕生寺の公孫樹の木を見上げると、いくつもの実をつけていることに気が付きました。
合掌