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他場所だより

他場所 平成25年11月

第92回唐沢山別時報告

植西武子

◇日 時:8月20日(火)~26日(月)
◇会 場:唐沢山 阿弥陀寺 (長野県諏訪市上諏訪唐沢日影)
◇導 師:河波 定昌 上首
◇維 那:古田 幸隆 上人
◇大木魚:大和伸嘉氏・金田昭教上人
◇参加者:43名

酷暑の下界から、タクシーで一気に登りつめると、さすが霊地唐沢山はひんやりとした空気で迎えてくれました。誰しもほっと一息つく瞬間です。

大和世話人代表はご一家揃って前々日から泊まり込み、準備を始めていて下さいました。前日からは古田幸隆上人と村松年秋ご夫妻も参加下さり、大活躍して下さいました。

参加者

参加人数は43名(男性21名、女性22名)でした。その内、全日程参加者は22名でした。南は九州から(5名)、北は東北から(1名)と全国各地から集いました。因みに中国(1名)、近畿(6名)、中部(10名=愛知4名、富山3名・長野3名)、関東(20名)と言う状況でした。

当日4時の集合時刻に31名が集いました。諸手続きを終え、6時にみんなそろって夕食を頂きました。この時間帯になると諏訪湖は夕日を浴びて一段と美しく輝き初め、誰もが唐沢山にきたことを実感する瞬間です。

きらきらと 諏訪の湖面は 輝きて
入り日の彼方に 弥陀想見す

開会式

7時より開会式がありました。世話人代表の大和啓二氏よりの挨拶、別時中の注意事項の後で、河波定昌上首より別時の心構えについてお話がありました。

唐沢山が日本的霊性の宿る神聖な聖地であること、そしてそこで継承されてきた別時の歴史や、一週間を如何に修行するかについてお話し下さいました。31名がそれぞれに一週間の修行にその決意を新たにしたセレモニーでした。

ご法話

ご法話は5日間に午前、午後に各1席ずつ、計10席ありました。河波上首が8席、通院される日(21日と23日)は大南龍昇上人が4席、ご講話下さいました。

河波上首は「点化」を中心に一点集中の念仏のあり方、「月の歌」を例示して重層立体的な日本文化を背景とした仏教の歩み、大乗仏教発展の歴史、礼拝儀の成立等ついて、広範囲な視点からお話し下さいました。

大南龍昇上人は①「別時の心構え」、②「起行の形式と起行の用心」、③「行儀分としての五根・五力・七覚支・八正道分」と言うテーマで綿密な資料を準備して、詳しくお話し下さいました。今まであやふやに理解していたことを確認することができました。

念仏三昧

唐沢山別時に参加される方は新旧問わずに「お念仏がしたい。」と心底から求めてこられますので、自ずからお念仏に熱が入ります。しかし最初から突入とは行きません。

維那の古田上人から「大木魚に合わせて下さい。」「大きな声を出してお念仏しましょう。」とご注意を頂きながらの悪戦苦闘が実状です。自分自身も反省することしきりでした。

煩悩の 分厚き曇に 覆われて
今日の一日(ひとひ)を むなしく過ごす

最初の頃は「道場の出入りが多すぎる。」と古田上人より苦言を頂きながらのお念仏でしたが、中日(なかび)を過ぎた頃より、大木魚に従ってだんだんと集中度が高まってきました。

ひたすらに だだひたすらに 称うれば
救いのみ声 かそけくぞ聞く

聖者墓参

予定していた24日は曇りでしたが前日の雨で足元がぬかるんでいるため、最終日の25日に延期しました。しかし、この日はあいにくの雨となり、庫裡の広間からの遙拝となりました。「七覚支」を歌いながらお山登って行くあの情景が見られず、残念でした。

閉会式

最終日は朝3時半の起床です。寝具の整頓やシーツの返却等を手早く済ませ、最後のお念仏に本堂へと急ぎました。お念仏の後、6時より閉会式が始まりました。河波上首より別時後の「尋常の念仏」を大切にするようにとのお言葉を頂きました。最後にみんなで「法の糸」を歌いました。一週間、共に過ごした法友に感謝の気持ちを込めて。……

「法の糸」 またの逢瀬を 誓い合い
唐沢山の 夏は終わりぬ

懇親会

26日の朝食は「無言の行」から開放され、座席をコの字形にして、個々に歓談しながら頂きました。自己紹介や別時についての感想を頂きました。何事にも賛否両論があり、今後の唐沢山別時の運営に生かして行きたいと思いました。

別時寸描

今回は若い初参加の方が何人かおられ、とても熱心に修行される姿に感激しました。仙台から参加された男性は東日本大震災の経験から、宗教の意義を実感し、仏教塾に入門された方でした。来年も参加したいとのことでした。

又、九州から参加の女性は河波上首のお話に涙が止まらなかったと深く感動されました。更に東京から参加の女性もお別時の雰囲気にすぐに馴染み、来年も参加すると言い、熱心に修行されていました。この二人の女性はいずれも下司仁美さんの紹介でした。

今年は食事内容が変わりました。従来は三食共、外注の弁当でしたが下司仁美さんのご尽力で朝夕は自然食を中心とした手料理でした。下司さんが献立から調理に至るまで活躍して頂き、大変なご負担をかけてしまいました。

或る朝、ふと見ると庫裡の裏の斜面に大きな黒い鹿が草を食んでいました。こんな身近に姿を現すことは今までにありませんでした。餌を求めて出てきたようです。必死に生きんとするその姿に、動物との共存を深く考えさせられました。

おわりに

長年に亘り、世話役代表としてご家族挙げてご尽力下さった大和啓二氏が懇親会の席上で、突然、引退を表明されました。以前より眼科で治療中とは伺っていましたが、事務的なことはサポートし、今後の会の運営には係わって頂きたいものです。今日までのご功績に深く感謝する次第です。林溥氏がその任を引き受けて下さることになっています。

さて、伝統ある唐沢山別時を継承して行くには課題が山積しています。時代の変化を踏まえつつ、伝統と創造の両面から考えていく時期が来ていると思います。皆様方の建設的なご意見を頂きながら、この伝統ある唐沢山別時を守り、新しい息吹を吹き込んで、次の世代にしっかりと伝承していきたいと思います。来年も皆様とのお山での再会を願っています。

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