第59回 高野山別時念仏修養会 報告2
田中 紀江
両親がお念仏をする家に育ったため、1歳のときから24歳まで不参加の年もありましたが高野山別時に参加してきました。去年の高野山別時は中止されましたが、今年は再開され、私の勤め先が学校関係ということもあって参加することができました。今年は電気係としてお手伝いをしていました。道場の一番後ろに座り、お念仏が始まると、初めの大木魚の一音と同時に一斉に電気を消し、終わりは維那の古川上人の戒尺に合わせて一斉に電気をつけます。毎日、朝夕の2時間のお念仏は脚の痛みと睡魔に襲われて厳しかったです。大木魚を担当された橋本様と横山様は本当に大変なご苦労ではないかと拝察いたします。
お念仏が終わると法話の時間です。導師の金田上人のお話をお聞きするのは初めてでしたが、分かり易く時間があっという間に過ぎてしまいました。大ミオヤ如来様は自分に会いたいと懸命にお念仏をするものを絶対に救ってくださるという力強いご説法に胸を打たれました。また、5年後に迎える弁栄聖者百回忌の年にはこの道場を一杯にしたいと決意を語っておられました。
大学教授をされていた三島様のお話では、お念仏を科学の観点からアプローチされていたのがとても興味深く印象的でした。また、今回のお別時再開にご尽力いただきました大屋様のお話は大きな仏教の流れを踏まえられた博識に満ちたもので私なりに理解させていただきました。
毎年道場を提供して頂いている高野山持明院は、日本史の参考書に出てくる「お市の方」の肖像画を所蔵している由緒ある宿坊です。朝夕は長袖でもちょうど良く、真夏とは思えないほど涼しいです。高くそびえた高野槇から蜩の鳴き声が響いてきます。また、三度の食事も肉や魚を使わない精進料理でシンプルですが、味付けも上品でとても美味しいです。中でもお別時最後の夕食は決まって高野山名物の胡麻豆腐とお野菜の天ぷらがでてきます。四日間の修行のご褒美を頂いた気分になります。5日目の最終日は午前4時半に持明院を出発し、奥之院まで行道をします。途中、弁栄聖者のお墓と法然上人のお墓をお参りし、奥之院ではたくさんのご回向の塔婆を諸菩薩様にお供えして水を手向けます。最後に弘法大師の御廟にお参りし感謝の念を捧げます。こうして高野山別時は終わり下山します。
今年のお別時の中で特に印象的だった出来事は、4日目の夜、私はお風呂を済まし、髪をとかしていると、ある参加者のご婦人に「あなた、ここに来た時より随分と明るくきれいになったわね。お念仏していると変わるのね」と言われたことです。とても驚きました。自分では今年も雑念ばかりで修行に集中できなかったなと反省していたのに、そのような勿体ないお言葉を頂いてなんだか照れくさかったのですが、とても励みになりました。これからもあらゆるご縁に感謝し、日々の修行につなげていこうと思います。合掌。