光明の生活を伝えつなごう

他場所だより

他場所 平成27年12月

第94回 唐沢山別時念仏会報告

植西 武子

◇日 時:8月19日(水)~25日(火)◇会 場:唐沢山 阿弥陀寺
(長野県諏訪市上諏訪唐沢日影7633-1)◇導 師:河波定昌上首◇維 那:古田幸隆上人◇大木魚:大和伸嘉氏・金田昭教上人◇参加者:34名

今年は、世話人がたった一人と言う前代未聞の状況に至りましたが、献身的にご尽力下さった方々、状況を把握して全面的にご協力下さった参加者のみなさんに励まされ、無事お別時を終えることができました。感謝の極みです。

参加者の状況

参加者数は34名と例年に比べて減少しました。それは毎年は各方面にお誘いの連絡をしたり、勧誘に努めておりましたが、今年は時間的にも精神的にも余裕がなく、努力不足であったと反省しています。
内訳は男性19名、女性15でした。その内、全日程参加者は14名でした。やはり1週間と言う長期休暇がとりにくい状況や、よほどの覚悟が無い限り、厳しい修業に立ち向かう人が少なくなってきている昨今の風潮も影響していると思われます。

開会式

夕食を済ませ、7時より開会式がありました。世話人代表の代行として、大変不躾ながら三島先生に開会の挨拶をお願い致しました。

導師の河波上首からは唐沢山別時の歴史からお念仏の有り様、即ち三種の行儀について、特にお別時の心構えについてお話し下さいました。

別時の日程

一週間の別時の内容は例年とほぼ同じ要領で実施されました。

一週間と言えど、開会日と閉会日を除くと実質5日間の日程です。毎朝起床4時から始まり、夜の8時までお念仏とご法話が中心の生活です。期間中に行事として聖者の墓参が一回あるのみです。初めての方には大変つらい経験であったかと思いました。

参加者の状況

そんな中で80才以上のご高齢にも拘わらず二名の方が一週間、立派に修業を終えられました。

一人は毎年広島から参加下さっている81才の野間尭先生です。今年は一週間の時間がとれて長年の望みを実現されました。

もう一人は84才の土橋祐治氏です。若い頃に一、二度参加されましたが、昨年「ひかり」誌の案内が目にとまり、何十年ぶりかでご参加下さいました。長年に亘って諏訪光明会を率いて、唐沢山別時の世話役としてもご活躍下さった土橋春雄氏の甥御さんに当たる方です。ご縁の深さをひしひしと感じました。

また、関東から参加された山本豊氏は初参加で、一週間を無事終えられました。最初の二三日はとても辛そうでしたが、何かを感じられたようにお見受けしました。世話役をしていてこれほど嬉しいことはありませんでした。

更にもう一つ、嬉しいことがありました。それはブラジルからの参加申し込みがあったことでした。恐らく、唐沢山別時で初めてのことと思います。国際化の波はお別時にもひたひたと押し寄せてきました。参加者は石川ゆき絵さんと言う方で、開教使の妻としてブラジルに渡り、その任を終えてからも当地に止まり、布教を続けておられるそうです。彼女からは新しい刺激と厳しい指摘を頂きました。やはり別時は原点に回帰すべきと反省させられました。

念仏三昧

お別時の中心はお念仏ですが、維那の古田幸隆上人の厳しい指導に依り、日に日にまとまったお念仏ができるようになりました。特に今年は木魚に関しては人数が少なかったこともその一因かもしれませんが、お上人様から褒められる場面もありました。

ご法話

ごく概略のみ

ご法話は午前と午後に一席ずつあり、5日間で十席でした。

河波上首が通院される2日分(4席)は大南龍昇上人がご講話下さいました。

河波上首は「お慈悲の便り」より、キリスト教との共通点についてお話を導入されキリストも阿弥陀様も同体異名であると話されました。

また、弁栄聖者は「変化」を重要視された(光化、霊化、神化など)。特にニコライ堂では「神化」が重視され、同時にイコン(聖像)も重視され、この二つが弁栄聖に大きな影響を与えたと言われている。日常生活の中でも変化(意識の変革)が大切であると述べられ、引き続き無意識の世界、更に阿頼耶識、空の現象学にも言及された。

また、宗教と音楽との関連についても話され、音楽には神と人が一つになる働きがあると述べられました。その例として音響忍、馬鳴菩薩、六時礼讃を上げてお話しされました。音楽の中で如来と我々が入我我入していったのである。

また、「禅と念仏」についても述べられました。禅宗も念仏の中から出てきた。

佛を念じて心あることなし。佛を離れて心あることなし。これは佛と心の相互連関の世界を現している。

また、キリスト教と仏教が20世紀に出会ったことは重要な点である。キリスト教なしに光明主義は生まれなかったとも言える。キリスト教においては「主の祈り」を、弁栄聖者は「釈迦の祈り」を祈る。「礼拝儀」に於いてキリスト教と仏教が一体化した。

更にポスト・モダニズムについても言及され、「自我」と「合理主義」で成り立っている近代はやがてニヒリズムに陥る。この「自我」を超えて行くものが「南無阿弥陀仏」である。「南無阿弥陀仏」はポスト・モダニズムであると結ばれました。

大南上人は本年も立派な冊子を準備して、4席お話し下さいました。前もって冊子を頂いたので、お話の全体像をおぼろげながら把握して、今のお話がどの位置づけにあるのかを理解しながらお話を聞くことができました。内容は紙面の関係で箇条書きとします。

○「お別時の心構え」について……「お慈悲の便り」より引用
○「安心起行」の形式を用心について……「笹本戒浄上人全集」より引用
○お念仏の心得・行儀分としての五根・五力・七覚支・八正道分
○七覚支について……

の順にいろいろと例をあげながら、分かり易く、詳しくお話し下さいました。頂いた資料は実に分かり易くまとめられていて、何度も読み返し、今後の勉強にも活かしたいと思いました。

聖者墓参

今年も予定通りに聖者の墓前で厳粛にセレモニーが行われました。河波上首は大事を取って庫裡より遙拝されました。本年は元気な方ばかりで、介助の必要な方もなく、「聖きみくに」を歌いながらの登り道もあっと言う間の事でした。河波上首に代わって古田上人が聖者のご略伝を朗々と読み上げられました。その声は静寂な空気の中で、微風に乗ってあたり一面に響きました。何十年と変わらない特別なひとときでした。

閉会式

3時半に起床し、寝具の片付けを済ませて、4時よりの最後のお念仏に真剣に取り組みました。閉会式では河波上首より下山してからの日常の念仏の大切さについて、お話を頂きました。最後に「法のいと」を歌いながら、共に過ごした一週間の法友との別れを惜しみ、そして来年の再会を心に誓いました。

謝辞

どうなることかと不安を抱きながらのスタートでしたが、ご支援頂いた多くの方々のお陰で大過なく終えることができました。

今回のお別時の第一の功労者は村松年秋、粽ご夫妻です。このご両人なしに実施することは出来ませんでした。ご主人は唯一の相談役として、また、実務担当として2年間、支えて下さいました。また、奥様は実に完璧に食事関係から、日常の雑事全般に亘り、手抜かりなくご活躍下さいました。特に佛様と向き合っておられる奥様に、真の念仏者の姿と合掌するばかりです。ご両人に対して深く感謝致します。

また、下司仁美様も昨年に引き続き、遠路九州より物心両面からのご支援頂き、どれだけ助けられたか、感謝、感謝の極みです。手早く家庭料理を準備して、食事に彩りを添えて頂きました。この功徳に対して心よりお礼申し上げます。

今後の課題

94回と連綿と続いて来た、伝統ある唐沢山別時、これを存続していくことは我々みんなに課せられた大きな使命と思います。大きな課題を抱えつつ、皆さんのお智恵とご支援で今後の在り方を探求していかなけらばならない時期にきています。

是非、皆様のお力添え、ご意見を頂けますことを祈念しています。

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