光明の生活を伝えつなごう

光明主義と今を生きる女性

光明主義と今を生きる女性 「見えないはたらき」に導かれて

矢野美紗子

今回、植西様より「ひかりに寄稿してみない?」とお声をかけて頂きまして、まだまだ不勉強で至らぬ私ではございますが、今回紙面をお借りして、少しばかり個人的なお話をさせていただきたいと思います。

改めまして、私は矢野美紗子と申します。京都市東山区で生まれ育ちました。私の母は、光子と言います。光明会に長くお世話になりました、河波昌の一人娘でして、私は孫にあたります。母は、名前の由来を「新幹線のひかりの光だよ。」と幼い頃には祖父から説明を受けていたそうです。母が生まれたのは、東海道新幹線ひかりが開通したすぐ後でした。

私は現在大学院に通っており、宗教学の修士号をいただくために論文を執筆中です。私が宗教学に興味を持ったのは、大学生の時にヨーロッパを旅し、洗練された西洋美術に魅せられたことがきっかけです。特にイタリアでは、教科書に出てくるような有名な名画や彫刻が見たくて、各都市を周遊しました。一番印象に残っている絵画は、サン・マルコ修道院(現在は美術館になっています)で見た、フラ・アンジェリコの「受胎告知」という作品です。この絵画は、徳島県鳴門市にある大塚国際美術館で、陶板で展示されています。彼はドミニコ会の修道士でしたが、深い信仰心から描く優美な表現と柔らかいタッチの絵の数々に、心が温かく感じたことを記憶しています。西洋美術について学ぶうちに、キリスト教が西洋の人々の生活や価値観にこんなにも深く染み込んでいるのだということを実感し、キリスト教について学び始めたことが、後々宗教学へと続く最初のスタートでした。

大学を卒業し、就職先の配属で東京に来てからは、依然より頻繁に祖父に会いに来ることができるようになりました。祖父と佐藤様は、いつも私が行くと、おいしいお食事とたくさんのお菓子・果物のお土産を持たせてくれました。就職してからは十分な時間が確保できず、なかなか本も読めずにいることを嘆いていた私に、もう一度学問の世界である大学院に行く、という選択肢を提案してくれたのは祖父でした。

これから色々なことを近くで教えてもらおう、と新生活への期待に胸を膨らませていた矢先、祖父は私が光明園に引っ越してきたその日の夜に亡くなりました。ちょうど桜台の千川通りの桜が咲き始めていた頃でした。今年の春、あの日から一年が経って桜が満開の千川通りを歩いていると、ふっと優しい追い風が吹き、桜の花びらがひらひら舞いました。「美紗ちゃん、しっかり頑張りなさいね。」と祖父が囁いてくれているような気がしました。この先もずっと、春の桜の季節には、微笑みながら私を見守ってくれているであろう祖父を感じて、「よし、頑張ろう!」というエネルギーが沸いてくるのだろうと思っています。

現在私は、月に2度ある光明園での例会に参加させていただき、皆さまと一緒にお念仏をお唱えさせていただいています。光明園でお世話になるようになってからは、たくさんの方とお話したり、光明主義について勉強させていただいたり毎日が学びの連続です。お念仏をするようになってから、私の心の中でひとつ大きな変化がありました。それは、「自分は自分の力で生きているのではなく、生かされている。」と思うようになったことです。今までは、大変お恥ずかしい話なのですが、「自分の道は自分で切り開く」といったような傲慢とも言える思考をしていたように思います。「南無阿弥陀仏」と日常の生活の中でお唱えするようになって、明らかに私の心には変化がありました。私が今まで幸せに生きてこれたことも、大学院に行くご縁をいただいたのも、光明園にお世話になるようになり、たくさんの人々との出会いや新しい経験を積ませていただいているのも、決して私の力によるものではないのです。

世の中には、自分の力だとは到底考えられない不思議なタイミングとご縁が存在しています。就職で東京が配属になっていなければ、あの時祖父が大学院への選択肢を提示してくれていなかったら(一年でも決断が遅ければ、今の私はきっとなかったと思います。)…など、数え切れないくらい私の歩んできた道のりには数々の見えない力が働いていたのです。お念仏をしていなければ、きっとこの「見えないはたらき」を自力で認識することはできなかったと思っています。私は一人で存在しているのではなく、阿弥陀様のお慈悲の光明のもとに生かされているのだということを実感してからは、以前よりも毎日が明るく、心に余裕をもって暮らせるようになった気がしています。

これからも、阿弥陀様の「見えないはたらき」に素直に感謝し、「南無阿弥陀仏」をお唱えし、一日一日を大切に生きていきたいと思います。そしていつか、私を教え導いてくれた祖父に「こんなことをやってきたよ。」と報告ができる日が来るといいな、と思っています。

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