光明の生活を伝えつなごう

近畿支部だより

近畿支部 平成21年9月

聖者90回忌徳林院別時

佐野 成昭

6月29日、徳本行者ゆかりの徳林院(大阪府豊中市)で、弁栄聖者(90回忌)と 徳本行者(192回忌)の遺徳を偲びつつ佐々木隆将元上首上人(9回忌)追恩念仏会が開催されました。

同寺の佐々木隆昌ご住職(隆将上人ご長男)主催で、ご次男・金田隆栄上人と弟のご住職他、19名出席されました。

殊に今年は聖者の90回忌を機にご遺稿集には載っていない未公開のご遺墨11点を金田上人より展示して頂きました。瀧見観音、普賢菩薩、出山の釈迦の秀作等を休憩時間に拝見させて頂き、大変有難く感じました。

この日の時間割は、午前11時より朝の礼拝・念仏及びご回向、午後1時から金田上人の「十二縁起」とご住職による「徳本行者」のご法話、2時半よりお念仏とご住職によるご回向があり、3時過ぎに終了しました。

金田上人のご法話は以下の様に思われました。

五種正行について信仰の育成には、主である称名正行だけでなく他も重要である。例えば、自尊心の高い人は礼拝行が大事である。知的なことに弱い人は読誦正行が大切で、特に「阿弥陀経」が良い。光明会の人はもっと他人にお念仏を勧めること、10年で5人の目標を持つこと。

「十二縁起」のご法話は大谷仙界上人がよく説法されたもので次になります。

  1. 無明(無知盲目的生存意思活動)
  2. 行(過去の行為の業) 例えば、子の過去の行と同類の両親が子を選びます(等流果という)。

以上が過去の二因で惑となる。

  1. 識 母胎に父の種と魂が宿った瞬間。
  2. 名色 胎内で育つ心(名)と体(色)。
  3. 六入 六根が出来る。
  4. 触 触れて赤ちゃんが育つ。病人も触れることが大切。触れて良くなる例がある。
  5. 受 苦楽を感じる。

3~7が現在の五果で苦を生じる。

  1. 愛 異性や物への愛着執着
  2. 取 手でかき寄せるような執着煩悩の盛んな行為。

8と9で惑を生じ、惑には煩悩の迷いの見惑と知の迷いの思惑を生じる。

  1. 有 生存により未来への業を所有する。

8~10が現在の三因、念仏で改善する。

  1. 生 業の結果として生まれること。
  2. 老死 生を受け、3より11を経過し老いて死ぬこと。

これら十二縁起で生じる惑と業苦をお念仏の行によって減少させて行きましょう。大難は小難に変わる。

次に佐々木ご住職による「徳本行者」のご法話が15分程あり、徳本行者の本の写しを配り、簡単に行者のことと自坊「徳林院」との関係をお話しされました。

行者は1810年に徳林院でご布教および五重相伝を行われた。そんな由緒ある寺で預かることに感謝、報恩になることを少しでもしたい。また、兄弟の多い中生まれつき片方の視力が低いご住職は子供の頃、父、隆将上人からバイオリンを自分だけに買い与えられた。その有り難さについて胸をつまらせて話されたことに感銘しました。

会終了後、雨の中ご住職はスモモの木に登り、お土産にと採って下さいました。
そのご住職と奥様、世話役の岩月様、ご遺墨を用意された金田上人に心より感謝申し上げます。

平成21年度近畿支部夏期別時

佐野 成昭

7月17日より20日(3泊4日)、導師に川本剛空師、維那に古田幸隆師をお迎えして、総勢23名の参加者にて夏期別時(支部主催)を開催させて頂きました。

会場に千年以上念仏の歴史のある比叡山の名刹松禅院(滋賀県大津市坂本)の別館一味会念仏道場をお借りしましたが、こちらも京都市古知谷と同じく清流のそばで緑が多く山深い特別な霊場です。古知谷阿弥陀寺は今年も都合がつかず、暫定的にお借りしました。参加者は近畿から11名、中部5名、北海道、関東、中四国および九州7名です。会場の広さに限りがあり、参加をお断りすることになった方には申し訳ありませんでした。

昼の平均気温が27度程で曇りや雨のお天気でした。

プログラムは1日目はヒグラシも鳴く夕方4時念仏、5時半夕食とシャワーの入浴、7時夕の礼拝、9時退堂就寝。2日目は5時起床、5時半念仏、8時朝食、9時朝の礼拝、10時半法話、11時半念仏、12時昼食、午後1時念仏、3時法話、4時半念仏、5時半夕食と入浴、7時夕の礼拝、9時退堂就寝。3日目は4時半起床、5時念仏で以後は2日目と同じ。4日目は4時起床、4時半念仏・回向、7時朝食と茶話会、8時半清掃、9時すぎ解散。

川本師の法話のテーマは「礼拝儀」。次が私(佐野)の心に残ったご法話の一部です。

  1. 21世紀の科学の発達が人類に最大危機を与えるとE・フッサールが述べている。宗教も同様で日本はオウム事件、米国は9・11テロ事件が良い例。21世紀はもっと危機となる。
  2. 人間は先入観があるので注意が必要。
  3. 立派なお上人といえども見解や深さが異なる。
  4. 礼拝儀の「礼」とは曲がるという意味であり、裏の意味として距離を置くということがある。礼を尽くすと愛が生まれ、限りなく近づくことになる。
  5. 礼拝儀の大正4年版、無対光の「摂化せられし終局には」と現在のように改訂されている。(読者の不理解で問題が発生するためとのこと)
  6. 「威神光明最尊第一にして」に関し、現代は「畏さ」の心が欠けている。日常頭の下がることがありますか?西洋の理性主義が神を殺したと言われる。人間が像を作っている。人が法則を作っている(仏法があるのに)。
  7. 「身意柔軟「に関して、現代人にストレスやうつ病が増加した。その人の肩を触ると鉄のように硬い。心が体に表れる。
  8. ⑧「三垢」に関して。悪口は、受け取らねば郵便物と同じように返却される。
  9. 「日夜に称説して」とは、読誦、観察、礼拝、称名、讃歎供養の五種正行である。これら以外は雑行として切り捨てているが、捨てることは活かすことである(=現象学)。重要な行の称名正行で称えている主体は何か、誰かをよく考えること。
  10. 本を読むのに主観を入れるな。筆者となって読むこと。更に筆者を超えること。
  11. 「仏道を得る」とは六度万行、布施等の六波羅蜜のこと。
  12. 「真応身」とは報身の殊。霊応身とは私の心の中にまざまざと現れる阿弥陀様のこと。
  13. 「善」の定義が西洋哲学者によりなされているが曖昧である。しかし、弁栄聖者の礼拝儀の「作す可らざる罪を造り 作すべき事を怠るの・・・」が、この定義を簡単明瞭にしている。
  14. 川本師は師の山本空外上人の臨終間際に面接され、お念仏を称えられたら土色のお顔がピンク色に変わった。念仏の力は間違いないと確信された。

①の「科学発達が危機を」に関して。
私の感想は、ノーベル発明の火薬、ライト兄弟発明の飛行機、また、原子力等の科学が兵器に悪用されています。産業革命後の科学文明が地球温暖化の原因を作ったことを考えると確かに科学発達が人間の危機を生んだと考えます。聖者の「外部の文明の長足の進歩に対し、道徳、宗教等の内部の精神文化の進歩は」全くバランスを欠いています。科学という両刃の剣は、道徳性や宗教性の進歩がある人間こそが、または国が責任を持って所有するべきです。世界の核兵器については国家同士のバランスを維持して徐々に撤廃すべきです。何の世界もすべて調和化・道徳化が必要です。

テロやカルトについて、私は、世界の宗教の定義に不殺生を入れられないのかと質問しました。川本師は、キリスト教でも現実殺生しているので無理、誰か偉大な僧が現れることが対策となる。9・11追悼会に世界の各宗派が参加したが、日本の仏教は参加しなかった。参加して報復の殺生を止めることを主張すべきだったと答えられました

⑥の「畏」は辞書に「おそれる、おそれつつしむ、とうとぶ、うやまう」とある。恐れ多いとか大変尊いものを知らず、自己中心、自由を重要視して勝手な振る舞いをする人が多い世の中です。迷惑の原因となることに気づかない世です。合理的かつ非倫理の功利的な志向から、自然や神仏や尊厳的で厳かさと宗教を重要視する志向に変わり、無私公利、共生の道徳的世の中に変えたいものです。日本は江戸時代の過去にそれに近い世の中がありました。

このお別時は最終日の朝食まで私語を禁止して厳粛に参加することを旨としていますが、古田上人と皆様のお蔭で良い別時となりました。特に最後の晩と朝の念仏の時間が印象的でした。木魚と念仏の声がピタッと合った何とも形容出来ない不思議な時がありました。

参加者の感想は次の通りです。

  1. 最近念仏しなかったせいもあって、前半は掛け軸の如来様の顔が怖かった。しかし、後半は怖くなくなった。この調子で次の別時まで念仏精進したい。
  2. 車で来るのは迷った。しかし、山深く自然に恵まれ良い場所だった。
  3. 念仏中は閉目開目して前を見るのみなので場所はどこでも良い。
  4. 更衣室が欲しかった。
  5. 古田師の大木魚が良かった。
  6. 最終日の夜と朝の念仏が良かった。
  7. ご法話は難しい所もあるが、日常的で大切な項目が心にぴったり来た。
  8. ご法話で「今悟らなければいつ悟るのだ」と指摘され、私のことを言われたようで良かった。
  9. いくつかのお別時に参加したが、こんなきっちりしたお別時に出会えて良かった。
  10. 今迄いつも二、三日までの部分参加でしたが、全日参加してその良さと必要さを経験出来て良かった。

この期間会場に常住し、別時に部分参加しておられた松禅院念仏道場の山岡和知世話人は、一味会の大声の「大念仏」と異なり、光明会式の念仏は静かだが、きっちりとまとまり良い別時であった事に感動した。松禅院念仏会にもその長所を取り入れたいと感想を述べておられた。お忙しい中、素晴らしい道場をお貸し頂き、心より感謝申し上げます。

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