乳房のひととせ 上巻
中井常次郎(弁常居士)著
◇第四、【【【?】】】酒戒 (筆記なし。)
飲酒は軽き罪なれども、?酒、即ち酒を売りて、人に飲ましむるは罪重し。菩薩は利他を本とす。他の心を迷わすは、自ら飲んで迷う罪に過ぎたればなり。
第五、妄語戒
正見とは正しき見込み即ち真理を見る目である。正見により、正しき生活ができる。この戒は人生を徒らに過ごしてはならぬ事を戒める。動物的生活を戒むる戒である。
何事も皆いつわりの世の中に
死ぬる一つはまことなりけり
第六、説四衆過戒
人の悪口をいってはならぬが、殊に仏法に帰依した人の事を悪くいうのは、重い罪である。
第七、自讃毀他戒
自分をほめてはならぬ。うぬぼれは悪い。人が何と悪口をいうとも、忍んで受けるのが菩薩である。自分の悪いのに気が付けば、速に改めよ。人にほめられても喜ぶ勿れ。自分を毀る人あらば、わがために良い師匠だと思え。他人が毀られているのを見れば、その毀りを自分が引き受け、良い事を人に譲るのが仏子の務めである。
第八、慳貪不与戒
人に物を施す時は、良い心持ちでせよ。喜んで施せ。何でも求められる物は施せ。施しに三通りある。財施、法施、無畏施の三つである。財施して、人に善心を起させると法施ともなる。無畏施は災難、苦労、悩みなどを無くしてやる事である。
第九、瞋不受悔戒
人を怒らせてはならぬ。慈悲心を養え。腹が立っても人が赦してくれと頼めば、〈受け〉容れてやれ。それを受け容れぬと重い罪になる。人にはプンと怒る性分が有る。それは、しかたがない。其の怒りを持ち続けて解けぬ時は、重い罪になる。
慈悲の眼に憎しと思う人はなし
罪ある人ぞ哀れなりける
第十、邪見謗法戒
邪見を起して、正法を謗るは、重い罪である。
〈中井常次郎様の直筆の聞き書き原稿の一部〉