光明の生活を伝えつなごう

発熱の文

発熱の文 42 九箇条の誓い


今日より誓って此条目を守らん。
一、時間は生命なり。大切なる時間、寸陰も無益に徒費せざらん。
二、婦人の弱点なる虚栄心を離れん。己に実力実行なくして名誉を望むが如きは全く人格の修養に害ありと雖、益なし。
三、堅く信実を守らん。虚偽は己が徳を失うの基なり。誓って之をさけん。
四、法言に非れば言わず。無益の雑談に時間を費す愚を学ばざらん。
五、人の悪評を為さざらん。人の長所を見て短処を見ざらん。自ら顧みるに自己の弱点甚だ多し。他人の我を評するを聞かば我いかに感ぜん。反省して他人を評する勿れ。
六、自己の資生事の為に他人に労を作さしむる勿れ。
七、人に怒る勿れ。怒を発するは自己の愚を他人に発表するに過ぎず。智慧あるものは怒ることなし。ゲーテ曰く「怒は愚者の胸に宿れる有毒のガスなり」と。
八、修養の為の我が身なることを忘るべからず。
九、濫りに他人を使役すること勿れ。
 人は確乎たる目的を立て、寸時も之を達せんと欲するの欲望なかるべからず。第一に如来の心光を獲得すべし。之に達せんが為に念仏三昧と瞑想とを離るべからず。善知識を求めよ。聞法を心がけよ。


現代語訳

今日より誓ってこの条目を守ります。
一、時間は生命です。大切な時間を少しも無駄遣いしません。
二、婦人の弱点である虚栄心から離れます。己の実力と実行なくして名誉を望むようなことは、全く人格の修養に害があり、得るものはありません。
三、堅く〔如来さまを〕信じ、誠実であることを守ります。虚偽は己の徳を失う基、誓って虚偽を避けて生活します。
四、法言以外は言いません。無益な雑談に時間を費すような愚を学びません。
五、人の悪評はしません。人の長所を見て短所は見ません。自ら顧みると、自己の弱点は甚だ多い。他人が私を評しているのを聞いたならば、私はどのように感じるか。〔そのように〕省みて、他人を評することはしません。
六、自己の生活上のことで、他人に労働をさせることはしません。
七、他者に怒りません。怒りを起こすことは自己の愚かさを他人に発表しているに過ぎない。智慧あるものは怒ることはない。ゲーテ曰く「怒りは愚者の胸に宿れる有毒なガスなり」と。
八、修養のための我が身であることを忘れません。
九、みだりに他人を使役しません。
 人は確乎たる目的を立て、僅かな時間も〔無駄にせず、〕目的を達成しようと望むべきです。第一に如来の心光を獲得しなさい。これを得るために念仏三昧と瞑想とを忘れず〔精進しなさい〕。善知識を求めなさい。聞法を心がけなさい。

解説

 この文面と類似の条目が『不断光』二九四~二九五頁にある。それによるとこの『御慈悲のたより』の条目は、イギリスの女性慈善事業家、エリザベス・フライの手記の条目を元に、弁栄上人がアレンジしているようである。
 なお国会図書館のHPで「エリザベス・フライ」(誤字「フヲイ」)で検索すると、弁栄上人が当時、閲読し参照した可能性のある書籍が数冊ヒットする。

出典

『御慈悲のたより』上巻一四一頁。文面、また掲載箇所より女性宛の書簡であることがわかる。「法言に非れば」などと、厳しき文面もあるため、弟子の尼僧宛の書簡である可能性が高い。

掲載

機関誌ひかり第742号
編集室より
行者(この文を拝読する者)の発熱を促す経典や念仏者の法語をここで紹介していきます。日々、お念仏をお唱えする際に拝読し、信仰の熱を高めて頂けたらと存じます。
現代語訳の凡例
文体は「です、ます」調に統一し、〔 〕を用いて編者が文字を補いました。直訳ではなくなるべく平易な文になるように心懸けました。
付記
タイトルの「発熱」は、次の善導大師の行状にも由来しています。「善導、堂に入りて則ち合掌胡跪し一心に念仏す。力竭きるに非ざれば休まず。乃ち寒冷に至るも亦た須くして汗を流す。この相状を以って至誠を表す。」
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