植西武子
◆去る6月27日、関東支部女性の会のメンバーは神奈川県二宮町にある、知足寺様を訪ねました。参加者は佐藤、田代、山本、森井、鎌尾、(敬称略)植西の6名と男性の志村氏の計7名でした。
時期的には梅雨の最中でしたが、幸いにも雨に降られることなく、時々薄日の射す天候に恵まれました。
◆関東支部女性の会は数年前から、年に一度は光明主義にご縁の深いお寺や、聖者がかつて、ご活躍された地を訪ねてきました。今年は知足寺様の訪問となりました。
その理由は、「ひかり」誌の中に紹介される先人の方々の遺文に、しばしば「知足寺」様の名前が登場します。そこで皆さんから、かねがねどんなお寺か是非訪ねたいとの声があり、この度の実現となりました。
◆地元の私以外は皆さん埼玉、東京と遠方のため、午後1時の訪問となりました。列車組、4名と私が二宮駅で合流し、徒歩で知足寺に向かいました。約束の1時にたどり着くと、重厚で歴史と伝統を感じさせる立派な山門が私達を迎えてくれました。その山門は寛政3年(1791年)の建立で、山号「塩海山」と彫られた立派な額が掲げられていました。相模湾を一望できる二宮の土地柄にふさわしい山号と思いました。
それを潜ると緑一面のすっきりしたお庭は深閑として、紫陽花が色鮮やかに咲き誇っていました。まるで別世界に身を置いた思いでした。深緑の山を背景に建つ本堂の佇まいも荘厳な雰囲気を醸し出していました。
◆知足寺様については私がおよそ20年前に神戸から二宮に移り住んだ時、当時、唐沢山別時の世話人代表としてご活躍下さっていた河野恒雄氏が「二宮の知足寺さんは私にとって大変懐かしく、お世話になった所です。是非訪ねて下さい。」と言われました。その直後に鎌倉光明会の方々数名でお訪ねし、当時はみどり先生もご健在でいろいろお話を伺いました。そして月一回の念仏会にも参加したこともありました。その時に「曽我兄弟のお墓がある」と言うことや先々代の相馬千里上人が開教使としてアメリカ(ハワイ・サンフランシスコ)で長年に亘って活躍されていたと言うことを伺いました。
◆訪問のチャイムを押しますと、相馬宣正ご住職とご子息の副住職様が迎えて下さいました。本堂に案内され、まず、ご本尊様にご挨拶をしてから、ご住職から知足寺について詳しくお話を伺いました。本寺は鎌倉時代の建立で、源頼朝の家人で二宮の領主、二宮弥太郎朝定の妻、花月尼が夫と兄弟(曽我十郎、五郎)の冥福を祈って開基されたそうです。当時は末寺六ケ寺を持つ地方の名刹であったそうです。なるほど、山門で感じたあの荘厳さはこのような深い歴史の裏付けが醸し出しているのだと納得しました。
◆また、先々代の相馬千里上人についてもお話し下さいました。この千里上人こそ、二宮の地、知足寺で光明主義の教えを後輩に伝授された偉大な人物です。前回お訪ねした時に頂いた「みどり」と言うタイトルの本に改めて目を通すと、何と驚くばかりのことに遭遇しました。後になって、光明会の重鎮として活躍された多くの方々が若き日にこの知足寺で相馬千里上人の熱いご指導の下で念仏修行にはげまれた事が詳しく記されておりました。私の知る人では吉松喜久造、河野恒雄、石田義信等の各氏が感謝の言葉を投稿されています。光明学園の岡本薫元校長も知足寺様とご縁があったようでした。
このように、時を経ていろんなご縁の糸が絡み合い、亡き人々との次元を超えた再会に心が揺さぶられることしきりです。
阪神・淡路大震災のこともあって、定年退職後は大好きな神戸を後にして、湘南に住みたいと言う気持ちから、あちこち探して、最終的に当地に落ち着いたのも、先輩諸氏が呼んで下さったのかなとも思われます。
◆お話を伺った後、本堂で森井明攝尼の維那により、『礼拝儀』をあげて、1時間弱のお念仏をしました。車で来訪の鎌尾さん、志村氏はこの時に合流されました。
知足寺様のご本尊前に座してお念仏をしながら、かつての大先輩達もこの場所で、熱い思いで一心にお念仏されたのだろうと、その姿を思い浮かべました。河野さんや石田さんが「よく来たね。」と笑顔で迎えて下さっているように思いました。移りゆく時の流れの中にさまざまなご縁の糸が絡み合い、今を生きる私達にいろんなメッセージを送って下さっているように思いました。
◆その後、外に出て念仏三昧堂を目指しました。三昧堂は二カ所あるとのことで、右側の方に決めて、山を登りました。むせるような深緑の山を登って行きますと、小さな建物が見えてきました。お上人様のお話では屋根の修理が必要とのことですが、壁はしっかりしていて6畳くらいの広さがあるように思われました。鍵が掛かっていて中は拝見できませんでしたが、多くの先輩諸氏の熱いお念仏の姿が彷彿としました。
まさに、山の中にあり、木魚の音に気を配ることなく存分に念仏三昧に耽ることができると思いました。お上人様は腰を痛めて通院されている状況でお山まで案内下さり、申し訳なく思いました。
◆関東支部、女性の会の突然のお願いに快く受け入れて下さった、知足寺様に心より感謝申し上げます。山門の前で記念写真を撮り、全員で合掌し知足寺様を後にしました。皆さんの顔は晴れ晴れとして、満足感に溢れていました。
遠方から来られた皆さんが、それぞれの心に何らかの収穫をえられたようで、地元の私としましても安心しました。
◆今回の訪問旅行には宿題が提示されています。それは私が今回読み直した「みどり」を回覧して、その読後感を交換し、今後の私達の修業の在り方、活動の在り方、女性の会の活動内容、等々みんなで話し会っていきたいと思います。
過去の偉大なる実績は時を経ても、我々の心に大きな感動と励ましを与えてくれます。今回はそれを実感した旅でした。